2026年9月10日 投稿(2026年9月10日 更新)

再エネの柱「太陽光発電」をもっと安全に!製造業者に協力義務、第三者機関のチェック…

「2050年までの脱炭素社会の実現」――。国が掲げるこの大目標を達成するため、政府の第7次エネルギー基本計画は、「再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する」との方針を明示している。その柱となるのが、国土面積当たりの導入容量が主要国で最大級となるなど着実に導入が進んでいる太陽光発電だ。

一方、太陽光発電を巡っては近年、様々な事故が報告されており、安全性を確実に保つことが、太陽光でつくった電力を安定的に供給していくための鍵となる。経済産業省も電気事業法を改正して保安規制を見直すなど、対応を強化している。

太陽光発電 Solar panel

約4万㎡が延焼。2024年・仙台市のケースとは

2024年4月15日、宮城県仙台市郊外で広い範囲で草原などを焼く火災が発生した。現場はゴルフ場を挟んで東西2か所に太陽光パネルが並ぶメガソーラー(大規模太陽光発電所)。火災が発生したのは東側のエリアで、PCS※と太陽光パネル、ケーブルが焼損したほか下草にも燃え広がり、延焼範囲は約4万㎡に及んだ。

原因はPCS内部のコンデンサの故障によるものと見られ、PCS内部の温度・圧力の上昇により、ケースが壊れ、コンデンサが燃えた状態で周囲に飛び散り、下草などに引火し燃え広がったと見られている。当時は晴天続きで乾燥しており、瞬間最大風速10.1m/sの風が吹いていたことなども延焼範囲拡大の要因となった。

※PCS…Power Conditioning Systemの略。太陽光パネルがつくる直流の電気を、家庭や建物で使える交流の電気に変える機器。

2024年4月に仙台市で発生した火災のケース

設備は10年で6倍。事故件数も発電タイプ別で最多

国内の太陽電池発電設備はこの10年間に約6倍にまで増えた。その分、事故件数も増えており、2023年度の事故件数は214件と、各種の発電設備の中で最も多くなっており、2番目に多かった火力発電(106件)の2倍に上った。

出力50kW以上の設備で事故の内容を見てみると、仙台市のケースのようなPCSの焼損、太陽光パネルやそれを支える支持物の倒壊・飛散など「電気工作物の破損」が88%と大部分を占めた。この他、強風で飛散した太陽光パネルが家屋を破損させるなど「電気工作物の破損等による物損」が7%、電気工作物の破損が火災を引き起こした「電気火災」4%、人的被害が出た「死傷」も1%となっている。

大部分を占めた「電気工作物の破損」の内訳を探ってみると、PCSが60%、支持物23%、太陽光パネル13%など。さらにPCSの破損原因を見てみると、「設備不良」「風雨」各7件、「保守不備」5件、「雷」3件、「水害」「その他」各1件となっている中で、「不明」が60件となっているのが目を引く。

上:2023年度の電気事故件数、下:屋根上に飛散した太陽光パネル

2040年には「23~29%程度」。求められる安全性

2040年度におけるエネルギー需給の見通しでは、2023年度実績で9.8%だった電源構成に占める太陽光発電の割合が、2040年度には「23~29%程度」になるとの見通しを示している。太陽電池発電設備の更なる安全性の確保は、日本のエネルギー政策全体にとっても喫緊の課題だ。

「電力需要の増加に伴って、電力の安定的かつ安全な供給へのニーズは引き続き増していくことが見込まれます。太陽光など再生可能エネルギーの重要性も高まる中で、発電設備を安全に設置し、稼働させることが、ますます重要となっていきます」

経済産業省電力安全課・課長補佐の中西俊貴さんは、こう語る。

事故原因究明に向け製造業者などに協力義務

政府は太陽電池発電設備の安全性向上に力を入れている。国際的なエネルギー情勢の変化や国内の電力需要の増加を背景として、電力の安定供給の確保などを目的に、2026年7月に成立・公布された「改正電気事業法」では、「太陽電池発電設備等の安全性の向上」が、改正の柱の一つとなった。

ポイントの一つ目は、太陽電池発電設備などの設置者が迅速に事故原因を究明し、その結果に基づいて適切な対策を講じることができるよう、製造業者、輸入販売業者、工事業者といった関係事業者の協力を得るための措置を講じたことだ。

特にPCSが原因となった事故の原因究明については、製造業者による調査分析に時間を要し、設置者が速やかな再発防止策を講じることが困難となったケースが多く見られる。2023年度のPCSの破損原因調査で「不明」が60件と飛び抜けて多くなっているのもこうした事情があるためだ。

設置者へのヒアリングによると、PCSは外側のカバーを外すと保証対象外となる場合があり、設置者による保守点検は困難。さらに、事故が発生した場合は、事故機を製造業者に引き渡し新品と交換するものの、原因究明については製造業者の調査結果待ちとなり、時間がかかってしまうという。

発火し焼けただれたPCS内部

経済産業大臣による「勧告」や「公表」も

このため改正電気事業法に基づく新たな制度では、設置者が行う原因究明や再発防止にあたって、その求めに応じた協力を製造業者など関係事業者に義務化するとともに、必要な協力を怠った場合、経済産業大臣による「勧告」を行うことや、勧告に従わない時はその旨を「公表」することが可能となった。

更には、関係事業者に対して、報告の要求や立ち入り検査の実施に加え、立ち入り検査の現場では機器の検査が困難な場合、機器の提供を命じることができることとなった。

「第三者機関」が事前に構造安全性をチェック

もう一つのポイントは、太陽電池発電設備の構造安全性に関する確認制度を強化したことだ。

現行制度では、太陽電池発電設備が安全に関する技術基準に適合しているかどうか、出力の大きな設備については事前に国が工事計画を審査し、出力の小さい設備については設置者自らが確認するという形をとっている。

ただ、民間専門機関を伴って実施した設置者への立ち入り検査では、構造計算書に問題があるとの指摘が5割超に上っている。2024年9月と2025年1月に10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備の設置者を対象にした保安管理状況調査では、構造計画書、設計図面、地質調査結果を作成しているかどうか尋ねたところ、「いいえ」「不明」合わせて3割程度に上っている。

このため新たな制度では、土木建築の専門性を有する「第三者機関」が、工事前に技術基準に適合しているかどうか確認する仕組みを設けることになった。設計不備による事故を防止し、安全性を更に向上させることを目指しての対応だ。

強風で持ち上げられ傾いてしまった設備

既存設備への立ち入り検査、改善指導なども強化

さらに、既に運用されている設備についても、安全性向上への取り組みを強めていく。

経済産業省では、立ち入り検査や法令違反などが疑われる設備の現地調査の実施を強化。技術基準に適合しているかどうかの確認を進め、補修に関する指導を行っていく方針だ。同時に、設置者に対して補修の必要性に関する理解促進や補修技術の普及に取り組んでいくことにしている。

具体的には、設置者向けの「保安講習会」を開催するほか、土砂災害警戒地域や斜面につくられた設備や構造計算書がない設備など高リスクなものを優先的に検査し、補修計画の策定・実行、再点検を含めた改善措置を指導、継続的にフォローアップしていく。また、設置者向けの相談窓口も整備する。

「設置者任せでなく、国としてできることを実行」

「設置者が安全に発電を行っていくために、今回、新たに必要な措置を講じました。安全性の更なる向上を目指して、必ずしも設置者任せにするのではなく、専門機関や製造業者など様々な立場の方の協力を得ながら、国としてできることを着実に実行していきたい」とした上で、中西さんは強調する。

「法律は全体の枠組みを定めたもの。制度の詳細については、これから具体化していきます。国民のみなさんが電気とともに安心して暮らせるよう、運用開始に向けてしっかり検討し、意味ある制度にしていきたい」

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