2026年9月28日 投稿(2026年9月28日 更新)

【富山発】鍛造ホイールに世界の車乗りから注文殺到 「走りが全然違う」職人技でEV対応も万全

自動車用のタイヤホイールで、「BBSホイール」と言えば、自動車好きなら知らない人はいないほどの世界的ブランド。国際自動車連盟が主催する自動車レースの最高峰「FIAフォーミュラ-ワン世界選手権」では、2022年から4年間、BBSがホイールを独占的に供給する「ワンメイク供給」した実績を持つほか、アメリカで最も人気のあるカーレース「NASCAR」でも2022年からワンメイク供給している。厳しい基準が求められるモータースポーツの世界で、抜群の信頼を寄せられているのは間違いない。この世界的人気ホイールを製造しているのが、富山県高岡市のBBSジャパン株式会社だ。新田孝之社長は、「大きなバッテリーが必要で、従来の自動車よりも重量があるEV(電気自動車)の普及が進む中、軽くて丈夫なアルミ鍛造ホイールの需要は伸びています。その中で、競合他社に追いつかれないようさらに技術力を高め、高品質の製品を供給していきたい」と話している。

BBSジャパンの各種ホイールの前に質問に答える新田社長

糸巻き機製造からホイール進出…世界レースを席巻

自動車のホイールは大きく分けて「鋳造」と「鍛造」の2種類があり、一般に流通しているホイールの99%は鋳造だ。鋳造ホイールは、溶かした金属を鋳型に流し込んで作るもので、コストが安く、造形が自由であるため、広く普及している。それに対して鍛造ホイールは、日本刀のように、アルミニウムの塊を高温でたたいて作り上げる。日本刀が鋭利で硬くなるように、たたくことでアルミの結晶がきれいに整列し、より丈夫になる。BBSジャパンでは、たたくかわりに大きな圧力をかけてプレス成型で鍛造ホイールを製造する。プレス成型することで密度が上がるため、鋳造に比べて20~30%も軽くすることができる。BBSジャパンは鍛造ホイールでは世界に並ぶものがないほどの技術力を誇っている。

BBSジャパンのルーツは、1971年設立のワシマイヤー株式会社。編み機用のアルミ製糸巻き機を製造していた。鋳造ホイールを製造していたドイツBBS社とワシマイヤーが1983年に技術提携して日本BBSが誕生、糸巻き機製造技術の応用でアルミ鍛造ホイールの開発を開始した。そして1985年、複雑なメッシュデザインのアルミ鍛造1ピースホイールを世界で初めて実現。1987年に富士スピードウェイで開催された世界耐久選手権では、1位から7位までをBBSホイール装着車が独占するという快挙を成し遂げた。1992年にはF1用マグネシウム鍛造ホイールを世界で初めて開発、フェラーリに納入した。2011年にはドイツBBS社の経営破綻に伴い、同社のレーシングホイール製造販売部門を買収。2013年、BBSジャパン株式会社に商号変更した。

BBS高岡工場

BBSジャパンの鍛造ホイールを装着する自動車は主に3種類。一つはモータースポーツ向け。次に国内外の大手自動車メーカーの高級車向け。そして三つ目が個人向けだ。新田社長は「スポーツカーでなくても、自分の車のホイールを替えて、もっと格好良く、もっと運転しやすく乗りたい、という個人からの要望が増えています。日本国内だけでなく、アメリカ、アジア、ヨーロッパと世界中いたるところから問い合わせや注文が殺到しており、我が社の今の生産力ではすべてをさばききれないほど」だという。個人向けのホイールも、F1用と同じ工場、機械で生産しており、それを求める顧客が引きも切らない。

BBSジャパンでは、普通のホイールとBBSのホイールの車とを乗り比べる試乗会を随時開催している。「同じBMWのSUVで乗り比べていただきますが、9割以上のお客様が『全然違う』と反応していただいています。加速性やハンドルとタイヤの追従性での違いが顕著で、『ハンドルが軽くなった』と言う方がほとんどです。車に乗り慣れた方だけでなく、あまり乗っていない大学生でもほぼ同じ反応。一般車や軽自動車でもホイールを履き替えると、見た目が格好良いだけでなく、乗り心地が全く違います」と新田社長は語る。

ポルシェに装着されたBBSの鍛造ホイール

F1用マグネシウム鍛造ホイールを装着したレースカー

「軽量・丈夫」武器に、自動車業界の戦国時代へ自信

EV(電気自動車)の普及が進む自動車業界は今、100年に1度の変革期にあると言われる。その中にあって鍛造ホイールはどうなのか。新田社長は「従来の自動車メーカーだけでなく、他業種からの参入も増え、自動車業界は戦国時代。その中で、高品質化、ブランド差別化の競争も激しくなり、鍛造ホイールへの需要はますます高まってきています。特にEVでは大型バッテリーが必要なため、2トンとか3トンもの重量がある自動車も出ており、軽量化と丈夫さを求めて鍛造ホイール装着が不可欠になってきています。我が社でも高まる需要に生産が追いつかない状態が続いておりました。国からの補助金もあって新しい設備が11月に完成予定です。その後は需要に着実に応えることができると思います」と話す。

アルミニウムを熱して最大1万2000トンの力でプレス成型する

中間仕上げの様子

技術は「最後は人」 職人を育て最高品質を追求

鍛造ホイールの世界で確たるブランドを確立しているが、そこに安住はしていない。「たとえば、今年1月に新製品を発表しましたが、3月には中国の展示会で、全く同じデザインのホイールが出品されていました。ただ、技術力が不足しているので我が社の製品よりもスポークが太いなど違いはありますが、どんどん進歩しているのは確実です。我が社も今のブランド力に安心することなく、他社に追いつかれないよう、さらに技術力を高めていく必要があります」と新田社長。

それにはITやAIといった最新技術の導入も大切だが、「最後は人」と新田社長は語る。鍛造には最大1万2000トンの力がかかるプレス機を使うが、その日の温度や湿度などによって微妙な調整が必要だという。仕上げも自動的に機械で磨くよりも、職人がやる方が誤差0.1ミリ以下の精度でできる。こうした職人の技量を大切にするため、BBSジャパンでは昨年から「マイスター」制度を設けた。現在、鍛造と仕上げの職人2人がマイスターとなり、その技を後輩に伝えている。「最高の技量を持つ職人をさらに育てていく。それこそが、最高品質の製品を作ることにつながります」と新田社長は話している。

【企業情報】▽公式サイト=https://bbs-japan.co.jp/▽代表取締役社長 新田孝之▽従業員=376人(2026年8月31日現在)▽資本金=1億円▽創業=1971年7月

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